真顔日記

上田啓太のブログ

「マンガ喫茶が怖い」という感覚

マンガ喫茶におびえる人に出会った。とにかくマンガ喫茶が怖いらしい。意外すぎる発想で面白かった。マンガ喫茶が「怖い」と表現されることあるか? 私にとっちゃ、マンガ喫茶はむしろ楽園なんだが。もしかして「まんじゅう怖い」みたいなことか? 「じゃあ料金出すから行こうよ」と提案すると、こちらがだまされるパターンか?

そういうことでもないらしい。本当に純粋に、ただただマンガ喫茶が怖いという。

具体的に話を聞いた。第一に、その人は閉所恐怖症である。四方を壁に囲まれた狭い空間にいると恐怖に支配される。なるべく開けた場所にいたい。自分の家でも部屋のドアを完全に閉めない。閉じこめられることに異常な恐怖感があるのだという。

第二に、その人はマンガにまったく興味がない。マンガと何の接点もない人生を送ってきた。ワンピースもドラゴンボールも進撃の巨人も読んだことはない。当然、マンガ喫茶に行ったこともない。しかし常識として、どんな場所かは知っている。店内の写真を見たこともある。そこに自分がいることを想像するだけで怖い。

閉所恐怖症の人間にとって、マンガ喫茶の小さなブースに閉じこめられる感覚は怖ろしく、あわてて外に出ても、壁一面には大量のマンガ、マンガ、マンガ……。何の興味もないものが、空間を埋め尽くすようにびっしりと棚に詰め込まれている。逃げ場がない。拷問だ。おかしくなる。

まさに恐怖の二段構え。閉じこめるだけでなく、偽りの解放の先にマンガをみっちりと用意して、安堵からのさらなる恐怖を演出すること。悲鳴をあげてメニューを見れば、そこに書かれているのは3時間パック、6時間パック、12時間パック、24時間パック。倍々ゲームで拷問の時間が増えていく恐怖に、あぶら汗が止まらない。パックされているのは私だ。私は、この空間にパックされている。

色々な人がいるもんだと思った。自分とは正反対で面白かった。こう考えると、私はむしろ閉所を異様に好んでいる。一畳半の物置に七年住んでいた事もある。そのため、マンガ喫茶のブースに入ると落ち着く。約束の地を見つけたような気分になってくる。

それにマンガを読むのも好きだから、定期的にマンガ喫茶に行っている。このあいだも行ってきた。気になっていたマンガを色々読んだ。真夜中の静かな店内に空調の音だけがひびいていた。安心した。深夜三時、どこかのブースのおっさんがドラクエの打撃音みたいなくしゃみをした。デクシュッ!