真顔日記

上田啓太のブログ

デッドラインの朝

私の学生生活は寝坊との戦いだった。とにかく朝は弱い。まったく起きられない。当時は実家暮らしだったから、毎日、母親に起こしてもらっていた。いま思えばすばらしい身分だった。寝坊しそうな時に、起こしてくれる存在がいる。

学校は朝の八時半からだった。今の感覚だと異常に早い。なんというムチャを押しつけてくるのか。当時の自分はギリギリまで寝ていた。目を覚まして、制服に着替えて、自転車に飛び乗って、遅刻しないためには、朝八時に起きる必要があった。八時を過ぎても寝ていれば確実に遅刻する。そのため、母親は八時ちょうどを「デッドライン」と名づけていた。八時を過ぎても私が起きてこないと、一階から母親の怒号が聞こえた。

「デッドライン越えたわよ!」

私も普通に布団のなかで、「クソッ、デッドライン越えたか!」と思っていたし、どちらも言葉のチョイスに違和感を持っていなかったが、今思うと、あれは映画のクライマックスかなんかで使われるべきセリフじゃないのか。ただ遅刻するだけなのに、デッドラインは重すぎる。私が起きてこないと家が爆発して家族が全員死ぬ、みたいな状況なのか。

ちなみに私は、しばしばデッドラインを越えて寝ていた。家も学校も爆発しなかった。ただただ遅刻するだけだった。教師はわりと怒っていたが、まあ、あの程度の罵声じゃ、うさぎ小屋のうさぎだって死なない。元気にぴょんぴょん跳びはねていた。