真顔日記

上田啓太のブログ

日記らしい日記

路上にセミが落ちている姿を見ることが増えてきた。もうすぐ夏が終わる。蛍光灯カバーの中で死んだ小虫たちを、ゴミ箱にざーっと流し入れる。墓標は立てない。 これまで長く日記という形式で文章を書いてきたが、日記らしい日記は意外と書いたことがなかった…

俺はaikoで、aikoはかわいい

aikoってかわいいですよね、と知人に言われた。そのような聴き方をしていなかったので驚いた。言われてみればたしかに、という感じだ。同時期にデビューした宇多田ヒカルや椎名林檎と比較したとき、aikoの存在は明らかにかわいさの方を向いている。その歌声…

フィクションを見る時だけ女になる男

私は男として日々を暮らしているが、フィクションを見る時は、女になることが多い。たとえば、漫画『君に届け』を読むたびに、主人公の爽子に感情移入して、風早くんに恋をしている。『君と100回目の恋』という映画を観た時は、主人公の女に感情移入して、恋…

aiko的なものとミスチル的なもの

自分がaikoについて書いた文章を読み返していて、この人は世界とaikoの区別が付いていないんじゃないかと感じた。これは良くない。私は世界とaikoの区別を付けている。私は正気である。 私はあらゆる物事にaikoを見出す一方で、そうして見出されたものを吟味…

足立区生物園の生きものたち

もう一年ほど前になるが、足立区生物園という所に行った。動物園ではなく生物園。不思議な名称だが、たしかに動物とくくるには多様すぎる生きものがいた。ヘラクレスオオカブトがいたり、チョウチョが庭園を飛んでいたり、巨大な水槽で金魚たちが泳いだりし…

デニーズのパルフェの謎

最近の自分はデニーズが好きだ。入りびたっていると言ってもいい。近所に24時間営業の店があるのが悪い。私のような生活リズム破綻者にとって、これは最高の存在である。 普通のカフェは閉店時間を気にする必要がある。しかしデニーズは深夜三時に唐突に行…

もう漢字は書けない

「ほうふつ?」「ひげみたいな字が二個並んでるんだよ」「それはわかる。しかし、それじゃあ書けない」 友人はスマートフォンを取り出すと、適当な画面に入力して私に見せてくれた。〈髣髴〉。ひげみたいな字であって、ひげではなかった。それは確認したが、…

aikoは世間が思うほど前髪を切りすぎていない

それは遠い昔、私がまだaikoを熱心に聴いておらず、ヒットチャートをにぎわす有象無象の一人だと思い込んでいた頃、私はaikoに対して、「いつも前髪を切りすぎている女」というイメージを抱いていた。 なんとなく存在を耳にしただけの状態でも、人は有名人に…

マンガ喫茶が怖いという感覚

マンガ喫茶におびえる人に出会った。とにかくマンガ喫茶が怖いらしい。意外すぎる発想で面白かった。マンガ喫茶が「怖い」と表現されることあるか? 私にとっちゃ、マンガ喫茶はむしろ楽園なんだが。もしかして「まんじゅう怖い」みたいなことか? 「じゃあ…

デッドラインの朝

私の学生生活は寝坊との戦いだった。とにかく朝は弱い。まったく起きられない。当時は実家暮らしだったから、毎日、母親に起こしてもらっていた。いま思えばすばらしい身分だった。寝坊しそうな時に、起こしてくれる存在がいる。 学校は朝の八時半からだった…

aikoとネタバレ

『ハンターハンター』をはじめて読む人と話す機会があった。私のほうは何度も読み返している漫画である。展開から何から熟知している。しかし向こうはまだ何も知らない。完全な初読として楽しんでいるようだ。 こうした場合、ネタバレの誘惑と戦うことになる…

赤字が消えて街に詩が生まれる

街の看板を見ていると気付くことだが、黒字と赤字だと赤字のほうが先に消えるようだ。これは看板における宿命なのか。風雨にさらされて、黒字よりもずっと早く消滅してしまう。 だから日本の街には、赤字だけが消えた看板があふれている。そのようにして、街…

『こんにちは赤ちゃん』の次に流れてきたら嫌な曲は何か?

古いヒット曲をシャッフル再生していたら、『こんにちは赤ちゃん』の次に LUNA SEA の『ロージア』が流れてきた。唐突な世界観の変貌が面白かった。シャッフル再生ではこういうことがある。感情のフリーフォールとでも呼びたくなるような急激な変化がちょく…

不潔なハエをプロデュースして人気の虫にしたときに起こりうるハエの内面的危機について

人間に嫌われる虫として、ハエとゴキブリは二大巨頭。どちらも視界に入れば即座に殺されている。今回はとくにハエについて考えてみたい。なぜ、ハエはこんなにも嫌われるのだろうか? どうすれば嫌われないようになるだろうか? もしも、ハエをプロデュース…

女子大生の聴くaikoに負けた

先日、この日記を読んでいる十九歳の女子大生と話す機会があった。当然のようにaikoの話になったんだが、彼氏とうまくいってない時によくaikoを聴いていたと言われて、勝てないと思った。なんというか、勝てない。リアルさにおいて勝てない。aikoとの関係性…

一人の男がaikoという沼に沈むまで

熱心に音楽を聴きはじめたのは中学生の頃だった。以来、さまざまなミュージシャンと勝手に関係を結んでは勝手に離れることをくりかえしてきたが、その経験から言えば、あるミュージシャンに深くハマる場合、その出会いは激烈でないことが多い。 たとえば、は…

コンビニのホットケースは便利

コンビニレジ横のホットケースは便利だ。アメリカンドッグを食べたい時に食べられる。私には発作的にアメリカンドッグを食べたくなる習性がある。この需要が満たされる。それにフランクフルトもある。お祭りでしか食べられないと思っていたものが、徒歩2分…

なぜ昨日の夕飯をすぐに思い出せないのか?

昨日の夜、何を食べたか? 突然そのように聞かれると、意外と思い出せないものである。実際自分も、こう問うてみると、脳はすぐに回答を出してくれない。昨日の夜に自分は何を食べたか。即答できない。サッと答えが出てこない。しばらく時間がかかる。記憶を…

なぜ白髪は一カ所に密集するのか?

私は遺伝的に白髪が出やすい。二十代半ばから出はじめた。その後も順調に増えている。これをどうするかが問題である。 前提として私は美容院に行っていない。長く読んでいる人は知っているのかもしれない。バリカンによるセルフカットで十年以上を過ごしてき…

二〇二〇

僕にはもう、色々なことが分からない。さみだれを漢字で書くことはできる。五月雨。これで、精一杯だ。しかし世の中は令和二年だとか言っている。知ったことじゃない。 昨日の夢を思い出そうとして、記憶と混濁して、判別が付かない。僕の知能は草むらのバッ…

「アルティメット」というスポーツがあるらしい

大学時代、知り合いが「アルティメット」という競技をやっていた。どんな競技かは知らない。詳しく聞いたわけでもない。 「おまえ、何のサークル?」「俺、アルティメット」 それ以上の記憶がない。「そういう競技があるんだ」と言われて、「へえ」と答えて…

地球のことが心配なら、まず踏むのをやめろ

今日はヒマだったので地球の気持ちになって考えていたんだが、やはり、自分のことを踏んでいるやつらが自分のことを心配していたら、「まず足をどけろよ」と感じると思う。地球を守ろう、地球にやさしくと言っているやつらが、自分の上をドタドタ走りまわっ…

根本的なかんちがい

小学生のとき、一人のクラスメイトがランドセルを忘れて登校してきた。なにも背負わずに教室に入ってきて、みんなに指摘され、あーっ!と言っていた。当然、その日はいじり倒されていた。私もゲラゲラ笑っていた。 しかし高校生の冬、私は制服を着るのを忘れ…

パーフェクトな酔っぱらい

先日、大阪の十三(じゅうそう)に行ったときのこと。 十三というのはいわゆる飲み屋街なんだが、駅前を歩いていたときに典型的な酔っぱらいサラリーマンを見かけて、すごく良かった。私は典型的なものを見るとテンションが上がってしまうたちだから、典型的…

ゾンビとタフグミ

深夜のコンビニは人の思考を停止させるのか。それとも、たんに私の問題なのか。真夜中にコンビニに行くときの自分は非常にぼんやりしている。感情が茫漠としている。ほとんど死んでいるも同然である。そのありようはゾンビの近似値だ。予想外のことがあれば…

歩きスマホの人間は、あかんぼのように周囲を信頼している

歩きスマホをする人々がいる。社会問題にもなっているようだ。しかし私は怒りよりもおどろきのほうが大きい。何におどろくかといえば、世界への圧倒的信頼感におどろくのである。私はあそこまで周囲のすべてを信頼できない。 とくにすごいのは、スマホの画面…

おっさんは一つの様式

気づけば三十歳を過ぎている。同世代の男は少しずつ自分をおっさんと称しはじめた。しかし自分にはどうもおっさんとしての自覚が生まれない。ほとんど人に会わない生活をしていることも大きいんだろう。ひとりでいると年齢感覚がアップデートされないため、…

読んだことのない雑誌を読んでみる

前置き:今年の没原稿を供養しておきたい。内容とは関係のない事情でお蔵入りになった。雑誌読み放題サービスを使って色々な雑誌を読んでみるという企画。 * 未知の雑誌を読むことには、独特の楽しさがある。ふだんの自分の関心から遠ければ遠いほどに楽し…

ハンガーにかけられたコートは、なぜあんなに偉そうなのか?

はじめて意識したのは十八歳の時だった。一人暮らしをはじめた冬である。自分のコートをハンガーにかけて思った。なぜ、コートという衣類はこんなにも偉そうなのか? 衣類がここまで偉そうな態度を取ることがあるか? 正面から見たときの話である。ものすご…

サンタのしっぽをつかめ

誰の人生にも、サンタクロースが嘘だと気づいた瞬間があるはずだ。しかし私は思い出せない。いつのまにか、「サンタなんていないでしょ」という冷めた態度になっていた。「サンタいるでしょ!」から「サンタいないでしょ」への転換、この瞬間が絶対にあった…