真顔日記

上田啓太のブログ

初恋の記憶がパピプペポ

成人式に出席したとき、「未来の自分に宛てた手紙」を読む機会があった。完全に忘れていたんだが、小学生のころ、「二十歳になった自分に手紙を書こう」という企画があったらしい。担任の教師がしっかりと保管していたらしく、その場で生徒のひとりひとりに渡していった。

みんな興奮していた。それは喜びによる興奮というよりも、うぎゃあやめろ的興奮である。大人になってから小学生の自分が書いた手紙を読まされるなど罰ゲームに等しい。私も絶対に読みたくないと考えた。

覚悟をきめて担任に渡された封筒を見た。そこには「はたちマンのぼくへ」と書かれていた。それだけで心が折れそうになった。まさか宛名の時点でスベってるとは思わないから。十年の時をへて、宛名でスベる。なんて怖ろしい子。

仕方なく内容も読んだ。そこに書かれていたのは、面白さ以前に、十年後の自分に読まれることを想定できていない文章だった。要するに内輪ネタであり、十年後の自分すら内輪から外れていたのである。

たとえば、「いまでもPさんのことが好きですか?」という一文があった。当時の自分が好きだった女子を想定して書いているようだが、まったく心当たりがない。それにPというのは、イニシャルトークでありえないアルファベットだろう。これじゃあ、パピ田パピ子みたいな名前になってしまう。

それでうっすら思い出したのは、当時、「たとえ未来の自分が相手でも、好きな女子の名前を書くのは恥ずかしい」という葛藤があったことだった。だからイニシャルで表記しようとした。しかし、「いや、アルファベットで書くのも恥ずかしい」という自意識もあり、結果、イニシャルも変えてPにした。アホか、と思う。未来の自分にまで好きな女子を隠すな。そのせいで、十年後のおまえはパピ子みたいな女を想像している。おまえのくだらない自意識のせいで、初恋の記憶がパピプペポだ。

パピ子は、腰のあたりでパキッと二つに折れる。血のかわりにチョコアイスが流れている。冷凍庫に住む女である。100円で買える安い女でもある。夏場は太陽に照らされてドロドロになる。おまえの彼女、駅前の広場で溶けてたよ。友人に言われてあわてて走る。パピ子との別れの原因は、今年の夏が暑すぎたせい。それがおまえの初恋の女なのか。よく冷えた初恋だこと。