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真顔日記

上田啓太のブログ

ネコは鼻ありきの生き物である

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ネコは鼻で世界を認識している。観察しているとそう感じる。人類は目に依存しているが、ネコは鼻に依存している。鼻ありきの生き物だと言っていい。人類は「とりあえず見る」が、ネコは「とりあえず嗅ぐ」のである。

このあいだ、部屋のプリンタの位置を変えたとき、ネコたちがスンスンとにおいを嗅いでいた。モノの配置を変えるたびにネコはこれをする。同居人女性はこの習性を利用して、飽きられたネコグッズを定期的に別の場所に移動している。まんまとネコたちは利用する。

「ちょ、ちょろい……」

同居人はあきれている。

このあいだの雨の日は、家に侵入してきたナメクジをスンスン嗅いでいた。ネコにとっては、プリンタもナメクジも同じということか。自分の生活空間に入ってきたものは、無機物だろうが有機物だろうが新入り扱いする。「ちょっと顔出せや」というかんじ。正確に言えば、ちょっとにおい嗅がせろや。最悪の先輩である。

人間の場合、鼻をヒクヒクさせると原始人っぽさが生じる。たとえばレストランで見慣れない料理が出てきたとき、あからさまに鼻をクンクンさせれば馬鹿に見えるだろう。顔面を近づけて本格的ににおいを嗅ぎはじめれば狂人扱いは必至である。鼻をあまり使わないことは文明人の条件なのだ。そこはネコとちがう。

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ネコには体臭もある。

以前、aikoの歌詞から引用して「バニラのにおいがするタイニーな女の子」について書いた。同居人はこのフレーズを気に入ったようで、うちの初音を「獣のにおいがするタイニーな女の子」と呼んでいる。初音というネコはこの家の4匹でいちばん身体が小さく、いちばん獣のにおいがキツいからである。

それで私はまたしてもaikoの偉大さを知ったというか、獣のにおいがするタイニーな女の子はぜんぜん魅力的じゃない。そんな女に男を取られたらaikoも納得いかないと思う。獣のにおいがするタイニーな女の子は四つんばいで合コンに来て、箸も使わずに生肉にかぶりついて、四つんばいで帰っていく。そして参加者が何人か骨になっている。

ちなみに、ネコの体臭はそれぞれにちがう。影千代は毛が長いから、布団を干したときの気持ちのいいにおいがする。いちばんいいにおいである。縁側で日向ぼっこしている影千代を見ると、これは要するに布団を干されているようなものなのかと気づかされる。

子供のころ、外に布団をほした日、母親がよく「おひさまのにおいがするわよ」と言っていた。それで私には刷り込みがある。母親という生き物には太陽のセールスマンみたいなところがあって、太陽のよさを売り込んでくるのである。私はよく売り込まれた。うちの親だけなのかもしれんが。

ネコの話のはずが母親の話になってしまった。

いちおう言っておくが、母親は鼻ありきの生き物ではない。