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真顔日記

上田啓太がいろいろ書くブログ

ろうきんからのお知らせが脳筋からのお知らせに聞こえた

日々と思考

「ろうきんからのお知らせです」

 コンビニの店内でそんな音声が流れていた。調べてみると、ろうきんというのは「全国労働金庫協会」の略らしい。

 しかし私には「のうきんからのお知らせです」に聞こえた。脳筋からのお知らせである。こちらは調べるまでもない。脳みそが筋肉の男のことである。マッチョへの囚われが認知を歪ませているんだろうか。聞きまちがいには無意識が反映されるというし。

 コンビニの帰り道で脳筋からのお知らせを考えていた。

「カギって奴のせいでドア開かないことあるでしょ? あれ、無理やりやれば、たいてい開く」

「自動改札のせいで先に進めないことあるでしょ? あれ、ドカドカ蹴れば、たいてい開く」

「そしたら駅員が文句言ってくることあるでしょ? あれ、ボコボコにすれば、たいてい黙る」

 脳筋からのお知らせはずっと聞いていられると思った。こんなもんはお知らせじゃない気もするが。

 ちなみに、ろうきんからのお知らせのほうは、「ろうきんカードを作ると24時間365日いつでも引き落せます」という内容だったが、これも「脳筋カード」に聞こえた。喋っている人間の滑舌が問題なのか、いよいよ私の筋肉への囚われのせいなのか。後者な気がする。とにかく私はマッチョとゴリラに弱いから。

 しかし、脳筋はカードなど持たないだろう。脳筋は貯金もしない。ほしいものは強奪すればいいからだ。だから「脳筋からのおしらせ」の時点で矛盾している。何かをお知らせする前にブン殴る。日本語は使わない。「ヴァー!」みたいな声しか出さない。

 脳筋にアイウエオはない。かわりにあるのがヴァ・ヴィ・ヴ・ヴェ・ヴォだ。ヴァ行である。見たことのない行である。脳筋は五十音にメリメリと指を突っこんで、そこから新たな一行をえぐりだしたのだ。

 脳筋が街を歩くとどうなるか? 何を見ても引っこ抜けるかどうかを考える。ダイコンと電柱の区別がついていない。馬鹿だと思うか? しかし脳筋はじっさいに電柱を引っこ抜ける。脳筋は引っこ抜いた電柱をまじまじと見つめる。ここで間違いに気づくか? まだ気づかない。電柱をシャリッとかじる。ようやく間違いに気づくか? 気づかない。破片をゴクンとのみこむ。とうとう気づくか? 気づかない。脳筋は味のことなど気にしない。なので脳筋は電柱を食べてニッコニコになる。脳筋は何を食ってもうまいと感じるからだ。

 そのまま脳筋は道を歩く。みちばたでお地蔵さんを見かけると、すぐさま遠くにブン投げる。近くにあった家の窓ガラスが割れる。怒り狂った家主が窓から顔を出すが、脳筋だと気づいて即座にもどる。勝ち目がないと知っているのだ。

 そのあとも脳筋は地蔵をブン投げていく。罰あたりだがどうしようもない。脳筋というのはファミコン時代のアクションゲームのようなもので、「引っこ抜く」と「ブン投げる」という二つのコマンドだけで日々を過ごしている。Aボタンで引っこ抜き、Bボタンでブン投げる。電柱だろうが地蔵だろうが関係ない。

 だから脳筋がお知らせしてくれている間はマシなのだ。脳筋がお知らせにとどまってくれてよかった。それならば、まだ脳みそに筋肉以外のものが残っているということだ。純粋な脳筋、脳みそが100%筋肉だけになった男には、お知らせなど決してできない。

 ちなみに私は、この妄想の中では、電柱と地蔵に感情移入している。路上に設置されて、脳筋に引っこ抜かれたりブン投げられたりしてみたい。それが私の秘めたる欲望(性癖ねじれすぎ)。