真顔日記

上田啓太のブログ

ネコの動画に入る飼い主の恥ずかしい声

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うちのセツシは返事をしてくれるんですよ!

いきなり元気いっぱい馬鹿まるだしで申し訳ない。どうもネコを語ると馬鹿がまるだしになる。しかし事実なのである。名前を呼ぶと、かなりの確率で「ニャッ」と返してくれるのだ。これにわれわれは興奮している。

「セツシ!」
「ニャッ!」

たったこれだけのことで、われわれ二人は軟体動物のようなグニャグニャの状態となる。ネコの返事は酢より効く。腰くだけの意味を身体で教えられる。本当に、腰はくだけるのである。

そして、ネコ狂いの同居人がこれを見逃すはずはなく、「動画撮ろうかなあ!」と言い出したんだが、即座に、「でもあたしの声も入っちゃうな」と続けた。

「こういうのに入る飼い主の声、だいたいキモくなるからな……」

これは本当にそうで、でれでれした三十男(私)の「ウハッ!」という声が入ったりする。機械というのは冷淡なものだから、われわれがネコを見たときの恥ずかしいリアクションまで、淡々と記録するのである。だから過去に撮った動画を見ると、ネコが腹を出して転がるたびに、小さな音量で「フハッ」「ムハッ」「フホッ」と、男の吐息がもれている。最低の副音声である。

「デュフ、フッ、デュフウ……」というくぐもった笑い声が入っている場合もある。その声は幸せそうではあるが、客観的に聞きたい類のものではない。ネコのかわいさに比例して、飼い主のキモさも増してゆく。これは宿命である。

「セツシ!」
「ニャッ!」
「デュフ、フッ、デュフウ……」

動画を撮ればこうなるわけで、ネコの返事よりも、その後の照れたトロルみたいな生き物は何なんだとなる。返事するネコなど目じゃないほど珍しい生き物の声が入っている。気が散って仕方ない。

ということで、同居人はあまりネコの動画を撮らない。撮る時はニヤニヤをおさえて険しい顔で撮っている。たまに小鼻がヒクヒクするだけだ。

ところで、ネコにとって、返事をするのはどういう気持ちからなんだろうか。あれは挨拶なのか。だとしたら何度も挨拶するのはおかしい気がする。われわれは嬉しいから執拗に名前を呼ぶが、そのたびに「ニャッ」と返事するのは面倒なのではないか。

しかも、最近自覚したのは、われわれはさんざんセツシの名前を呼んでおいて、返事をもらうと「どうしたの~?」と言っている。これは異常なやりとりだ。自分から話しかけたのに「どうしたの~?」は絶対におかしい。しかも正確には、

「んんん~、どぅおしたのぉ~?」

であり、鼻の下がものすごく伸びている。その表情はどすけべな馬という感じ。とにかくネコを飼うのは大変である。日々、見たことのない自分を発見させられる。具体的には、照れたトロルやどすけべな馬。ろくな自分がいない。