真顔日記

上田啓太のブログ

ネコの動画に入る飼い主の恥ずかしい声

f:id:premier_amour:20160929210332j:plain

うちのセツシは返事をしてくれるんですよ!

いきなり元気いっぱい馬鹿まるだしで申し訳ない。どうもネコを語ると馬鹿がまるだしになる。しかし事実なのである。名前を呼ぶとかなりの確率で「ニャッ」と返してくれる。これにわれわれは興奮している。

「セツシ!」
「ニャッ!」

これだけのことで、われわれ二人は軟体動物のようなグニャグニャの状態となる。ネコの返事は酢より効く。腰くだけの意味を身体で教えられる。たしかに、腰はくだけるのである。

ネコ狂いの三十六歳女性がこれを見逃すはずもなく、「動画撮ろうかなあ!」と言い出したんだが、即座に「でも、あたしの声も入っちゃうな」と続けた。

「こういうのに入る飼い主の声、だいたいキモくなるからな……」

これは本当にそうで、でれでれした三十男(私)の「ウハッ!」という声が入ったりする。機械というのは冷淡なものだから、われわれがネコを見たときの恥ずかしいリアクションまで淡々と記録するのである。過去に撮った動画を見ると、ネコが腹を出して転がるたびに、小さな音量で「フハッ」「ムハッ」「フホッ」と男の吐息がもれている。最低の副音声である。

「デュフ、フウッ、デュフウ……」というくぐもった笑い声が入っている場合もある。その声は幸せそうではあるが、客観的に聞きたい類のものではない。ネコのかわいさに比例して、飼い主のキモさも増してゆく。これは宿命である。

「セツシ!」
「ニャッ!」
「デュフ、フウッ、デュフウ……」

動画を撮ればこうなるわけで、ネコの返事よりも、その後の照れたトロルみたいな生き物は何なんだとなる。返事するネコなど目じゃないほど珍しい生き物の声が入っている。気が散って仕方ない。

ということで、三十六歳女性はあまりネコの動画を撮らない。撮る時はニヤニヤをおさえて険しい顔で撮っている。たまに小鼻がヒクヒクするだけだ。

 *

ところで、ネコ的に返事をするのはどういう気持ちからなんだろうか。あれは挨拶なのか。だとしたら何度も挨拶するのはおかしい気がする。われわれは嬉しいから執拗に名前を呼ぶが、そのたびに「ニャッ」と返事するのは面倒なのではないか。

しかも最近自覚したのは、われわれはさんざん名前を呼んでおいて、返事をもらうと「どうしたの~?」と言っている。これは異常なやりとりだ。自分から話しかけたのに「どうしたの~?」は絶対におかしい。しかも正確には、

「んんん~、どぅおしたのぉ~?」

鼻の下がものすごく伸びている。その表情はドスケベな馬という感じ。とにかくネコを飼うのは本当に大変である。日々、見たことのない自分を発見させられる。具体的には照れたトロルやドスケベな馬。まったく、ろくな自分がいない。