真顔日記

上田啓太のブログ

ヨガのらっきょ!

同居女性が寝る前にヨガをやっている。すぐに飽きるかと思っていたが、しっかり続いているようだ。スマホでインストラクターの動画を流し、それにあわせて色々なポーズをとっている。

ネコたちはそんな女性をジッと眺めている。あれは笑う。観察されてるじゃん、と思う。毎日エサをあげているのに、飼い主であるはずなのに、おもしろポーズの珍獣扱いである。

さて、しかし今回はネコの話ではない。今日書きたいのは、ヨガのポーズのなかに、『おしゃれ手帖』で最後のアイドル夢川しゅんが「らっきょ!」と叫ぶシーンがあったことなのである。

だが、この説明でピンときた人はいないだろう。これは断言できる。絶対に一人もいない。今の説明で即座にイメージが浮かんだ人は頭がおかしい。なので説明しておきたい。『おしゃれ手帖』というのは、長尾謙一郎のギャグマンガである。これに夢川しゅんというキャラが一度だけ出てくる。

愛蔵版5巻から引用しておく。

f:id:premier_amour:20160409233230j:plain

同居女性がこのポーズをしていた。というか、ヨガの一連の動きのなかに、これとまったく同じポーズがまぎれこんでいた。当然私は爆笑した。まさか同居人が長尾謙一郎マンガのマイナーキャラになってると思わないもん。

これ以降、女性がヨガをはじめるたびに、私はらっきょのポーズを楽しみにするようになった。ネコといっしょにジッと観察である(ネコはらっきょを待っているわけではない)。

女性は「ジロジロ見るな!」と言う。

「もうらっきょ終わったから!」

「ジロジロ見るな」はいいとして、「らっきょ終わったから」は意味がわからない。女性の中でも、らっきょのポーズになってしまっている。これには小首をかしげた。

らっきょを観察する日々が続き、同居人がカレーの添え物に見えはじめた時、こんなことを言われた。

「あんたもやりなさいよ」

このフィールドに上がってこい、ということだった。おまえは客席から見ているだけなのか、らっきょを見る者と、らっきょをやる者どちらを選ぶのか。完全な挑発だった。私は乗った。

仰向けに寝ると、こうなった。

f:id:premier_amour:20160409233230j:plain

馬鹿が二人に増えたわけである。

やってみて分かったが、らっきょのポーズは異常にキツかった。アホらしいポーズだが負荷はキツい。これは発見だった。ポーズのアホらしさと負荷のキツさは比例するのだ。日常にない筋肉の使い方をするからだろう。

「らっきょキツいでしょ……!」

女性はプルプルしながら言った。

「らっきょキツい……!」

私も震えながら返した。

「毎晩やってるんだよ……! あたしは、これを……!」

「それは……すごいことだと……思う……!」

「なのにあんたは馬鹿にして……! らっきょとか……!」

「それは……申し訳なかった……と思う……!」

らっきょは長かった。我々は震えながら耐えていた。小刻みに震える二人の馬鹿と、それを見守る真顔のネコたち。ご近所には見せられない姿である。

「これ……いつまで……!」

「まだまだ続くよ……! がんばるんだよ……!」

「無理なんだけど…‥!」

「根性でなんとかするんだよ…‥!」

「無理……! マジ……無理…‥!」

「効いてる証拠…‥!」

しかし、私は立ち上がった。無理はしない主義なのである。

「ちょっと!」と言われたがそれも無視して、プルプルする脚を引きずりながら小部屋に戻った。小部屋から居間を眺めた。らっきょの女がいた。ネコは暇そうに耳を掻いていた。やはりあれはただのアホらしいポーズである。負荷がキツかろうが、らっきょはアホらしい。あのフィールドには上がりません。

愛蔵版 おしゃれ手帖 5 (ヤングサンデーコミックススペシャル)

愛蔵版 おしゃれ手帖 5 (ヤングサンデーコミックススペシャル)