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真顔日記

上田啓太がいろいろ書くブログ

こたつはネコたちの村

ネコのはなし

こたつという魔物について。

むかし、三十六歳女性がこたつから頭だけ出して、飲み会に行きたくないと愚痴っていたことがあった。あれは面白かった。本当に頭部だけが出ており、首から下はこたつの中だった。そんな状態で、

「あー、飲み会行きたくないー」

そりゃ行きたくなくなるだろ、と思った。こたつから頭だけ出した状態で行きたい飲み会などこの世にひとつも存在しない。最高の店と最高のメンツを用意しても、こたつには勝てん。しかも三十六歳女性は会社の飲み会だ。これはさまざまな飲み会たちの中でも最弱もいいところ。勝てるはずがない。

こたつというのは本当に人を「食べる」もので、こたつに飲み込まれた人間は外に出ることを望まなくなる。私も過去にこたつに食べられて、飲み会行きたくないとか、バイト行きたくないとか、寝返りすら打ちたくない(腰骨が引っかかるから)とか思っていた。

しかしこの数年、我々はこたつに足を入れていない。私も三十六歳女性も、右足も左足も。我々にはそれぞれ二本ずつ、合計四本も足が生えているというのに、一本もいれていない。というのも、いつのまにかこたつはネコたちの住処となっており、人間が足を入れれば確実にネコにぶつかる。1匹の頃からそうだったのだから、4匹もいる今じゃ人間の足をいれる余裕などない。どうあがいてもネコにぶつかる。まったく足をのばせない。

しかもネコたちはこたつを自分の空間だと思っているらしく、人間の足が入ってくると野蛮な侵略者に抵抗するかのように猛然と牙をむく。「われらの村を守れ!」みたいなテンションで入ってきた足に噛みつき、飛びかかってくる。

おまえらの村じゃねーよ、と言いたくなるが、もちろん通用しない。強烈な抵抗である。「百姓一揆」とか、そんな言葉が浮かぶほどの抵抗。歴史の一ページを見ている気分になる。なので我々はあきらめる。こたつはネコたちの村である。

ある日の村人の様子である。

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ずっと見張っていた。村の門番じゃないんだから。

もっとも、最近はすっかり春であり、三十六歳女性はこの連休のうちにこたつを片付けると宣言していた。村の解体・撤去である。となるとネコたちの強烈な抵抗がありそうだが、そのへんは現金である。暖かくなってからは入っているのを見たことがない。「われらの村? あれが?」みたいな顔をして、涼しい縁側に新たな集落をつくりだしている。季節とともに室内を旅する遊牧民、それがネコということか。