真顔日記

上田啓太のブログ

我々はパピコに吸わされている

パピコを食べたことがなかった。アイスの菓子であり、ずいぶん昔から存在しているのに、食べたことがなかった。パピプペポを好む人間として失態だと言える。三文字のうち二文字にパピプペポが使われているのだから一度くらい手を伸ばしてみてもよかったはずだ。

同居女性が買っていたので分けてもらった。はじめて食べた。これはよいものだと思った。ついつい吸ってしまう魔力がある。貪欲な自分を発見させられる。ジェル状のものを吸う時、人間の欲望はもっともむきだしになるのだと知った。

最後に残った少量のチョコを必死で吸っているときなど、パピコを吸っているというよりは、パピコに吸わされていると言うしかない状態でしたからね。主語がパピコに移っていた。私がパピコを吸っているのではない。パピコが私を吸わせているのだ。

「これはパピコの中でもとくにおいしいパピコだからね」と女性は言った。

「特別なパピコなんだよ」

聞くと、普通のパピコとちがい、粉砕されたクッキーが入っているらしい。たしかに入っていた。それが非常に良い役割を果たしていた。

「ただでさえおいしいパピコのなかでも、とくにおいしいパピコってことだよ」

みずからパピコを開発したような顔で言い、前歯をキラリと光らせた。

余談だが、この女は食べ物を形容するとき、頻繁に「おいしい」を付ける。今回もナチュラルに「おいしいパピコ」と言っていた。おいしいからおいしいと形容するんだろうが、アホらしさを感じるのも事実である。

以前、パン屋に行くから何か買ってこようかと提案したら、「おいしいパン」と言われたことがあった。あれは途方にくれた。そりゃ、おいしくないパンよりはおいしいパンのほうがいいだろうよ。人類の誰だってそう思うだろうよ。おいしいパンとおいしくないパンの二択でおいしくないパンを選ぶ人間は一人もいない。しかし具体性のなさ!

そんなことを思いながら、私はパピコに吸わされつづけた。最近は暖かくてアイスがうまいから最高である。