真顔日記

上田啓太のブログ

デザイナーズマンションの住人はこんな暮らしをしている

一度、デザイナーズマンションに住んでおきたい。

ネットで物件を見ているとそう思う。でないと、妙な幻想がいつまでも消えない。明らかに自分の中にデザイナーズマンション幻想がある。これはもう大昔からある。

現実をイメージするだけで幻想は揺らぐ。いくらデザイナーズマンションだからって、生活の煩瑣な色々が消えるわけではないだろう。人は生活せねばならん。放尿すれば排便もする。部屋の床には陰毛も落ちる。食べカスは落ちるし、生ごみも出る。生ごみが出ればゴキブリも寄ってくるだろう。

しかしネットで美しい室内写真を見ると、すぐさま幻想は復活する。デザイナーズマンションは生活の煩瑣な色々だっておしゃれにしてしまうんじゃないか。

ということで、私の妄想するデザイナーズマンションでの暮らしを書いておく。デザイナーズマンションに住む人間は、こんな暮らしをしているはずである。

 *

朝九時、部屋にさしこむ光で目を覚ました。日曜日だから仕事はない。ソファにすわって熱いコーヒーを淹れる。たいせつな朝のひととき。

ひと息ついたあとは、コーヒーの利尿作用のおかげで本日一度目の排尿。つるんとした白い便器にきらきら光る黄色い放物線が注がれる。トイレに小さな虹ができた。すぐに写真を撮ってインスタグラムにアップロード。さっそくいいねがついて心がほっこり。べつに評価を求めてやっているわけではないけれど、綺麗なものを共有できるとやっぱりうれしい。

冷蔵庫では生ごみが腐りはじめていた。すっと息を吸いこむ。そんなに強く主張はしないけれど、甘くて素敵な香り。買ったまま放置しているジャガイモからは本格的に芽が出はじめた。どんな花が咲くか楽しみ♪

お昼はさいきん見つけた近所のお店でランチ。食器までこだわっていて上質なかんじ。もりつけが素敵だったから食べる前につい写真を撮ってしまった。これもインスタグラムにあげよう。

帰宅後、すぐに脱糞。やはりトイレはおちつく。最近の個人的なブームは「大」なのに「小」で流すこと。うまく流れなくてプカプカするうんこかわいい。

食事にこだわるわけではないけれど、からだをつくるものだから質の低いものはいや。自然と手がのびるのは無農薬野菜。そんな生活を続けていると、うんこにも美意識が届きはじめる。どうせ毎日出すのならセンスのよいうんこにしたい。それが僕たちの本音なのだ。

午後はソファに座ってリラックス。足元をゴキブリが走っている。アップルから出たばかりの銀色のゴキブリだ。七色展開されたゴキブリだけど、やはりベーシックなシルバーにいちばん惹かれる。はやりものに流されるのは好きじゃないけれど、アップルの新製品にはついつい注目してしまうのが僕らなのだ。

「今日はみなさんに、画期的なゴキブリを紹介します」

ジョブズが生きていたら、そんな言葉でプレゼンを始めていたのかも。

夕方、彼女が家にきた。このあいだ購入したレコードを見せると、ぜひきいてみたいとのこと。もちろん僕も彼女もスマートフォンで音楽を聴くことはあるし、その利便性を否定はしないけれど、レコードには一部の人間にしか分からない良さがある。しばらくレトロな音楽に身をひたした。

夜十時、彼女が脱糞。

しばらくして、僕も脱糞。

「ね、うんこって、いいよね」
「うん、なんかいいよね」

僕たちは、多くを語らない。それでも分かりあえるのは、きっとセンスが似ているから。彼女のTシャツには胸元にさりげなく unco のロゴ。僕が誕生日にプレゼントしたものだ。さっそく彼女に、「大」なのに「小」で流すことを教えてみた。しばらく二人で盛り上がる。うまく流れなくてプカプカするうんこ、本当にかわいい。

「友達におしえていい?」
「もちろん」

流行りはじめるかも。

夜十二時に布団に入った。寝室で流すのは、あたたかな音色のエレクトロニカ。枕元の白熱灯が室内を照らしている。彼女におやすみのハグをした。

「ね」
「ん」
「便意、感じてる?」
「うっすらと」
「あたしも、うっすら感じてる」
「便意って、なんかいいよね」
「うん、いいよね」
「予感だけがあるから?」
「予感だけがあるから」 

 予感だけがある
 僕たちの胸がときめくのは
 そんなときなのだ
 たとえば三月の寒い日に
 桜のつぼみを見つけるような

 尻の開花をまえにして
 僕らの心は予感にふるえる
 便意というのは
 うんこのつぼみだから…… 

彼女は寝息をたてはじめた。僕は夜の音を聴いていた。うっすらと便意は続いていた。また古い一日が押し流されて、新しい一日がやってくる。僕はそっとおなかにふれる。ふくらみはじめたうんこのつぼみ。

明日の僕らは、尻からどんなうんこを出すのだろう?