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真顔日記

上田啓太のブログ

ファミレスでおばあさんたちがルンバの話をしていた

以前、ファミレスでめしを食っていたら、近くにいた四人組のおばあさんの会話が聞こえてきたことがあった。それが面白かった。ルンバの話をしていた。例の自動掃除機。

当時は今ほど普及しておらず、四人のうち三人は知らないようだった。一人だけがテレビで見たらしいルンバの話をしている。しかしその一人も記憶がものすごく曖昧だった。説明もたどたどしい。たぶん本当にチラッと見ただけだったんだろう。

・円盤のようなもの
・勝手に動く
・ごみを吸い取る

この三つの情報を、あっちこっちに脱線しながら説明していた。残りの三人がざわついていた。「そんな訳のわからないものがあるはずないじゃないの」みたいな反応、「あなた、騙されてるんじゃないの…?」という反応だった。

私は笑いそうになりつつも一人でハンバーグを食べてたんだが、耳は完全におばあさんたちのトークに向いていた。ぜんぜんハンバーグの味がしない。おばあさんの必死の説明は続くが、やはりグダグダでグズグズの説明でしかなく、頑張って色々言ってはいるんだが、要約してしまえば、

・円盤のようなもの
・勝手に動く
・ごみを吸い取る

まったく新たな展開がない。突破口が開けない。だから残りの三人はあいかわらずルンバが何なのか理解できないし、おたがいに顔を見合わせて何か言いたそうな顔になっている。それでとうとう、一人が話をさえぎって、

「宗教か何かじゃないわよねえ……?」

私はもう限界だったんだが、いちおう黙々とハンバーグを食べていた。たしかにおばあさんの説明だけきくと神の起こした奇跡にしか聞こえなかった。家のなかにとつぜん円盤があらわれて、床のほこりを吸いはじめる。やってることは地味だが奇跡は奇跡である。「床のほこり」にも深遠な意味がこめられている気がしてくるし。「自我の汚れ」みたいな。

結局、おばあさんの説明は完全な失敗に終わり、別の一人が「そういえばタカハシさんところの息子さんが…」みたいな無関係の話題を出し、ルンバの話はフェードアウトしていったんだが、あれは本当に教えてやりたかった。私に勇気さえあれば、自分の席からガタッと立ち上がり、となりのテーブルまで行っていたと思う。そしておばあさんの肩に手をおき、残りの三人をゆっくりと見回し、こんなふうに言ったことだろう。

「この方は正しいことを言っておられます」

「床のほこりを吸い取る丸い機械は実在するのです」

「人はそれをルンバと呼ぶのです」

まあ、完全に誤解される。火に油をそそぐ結果になる。「近くに信者がいた」みたいな解釈になる。「信仰は自由だけれどねえ……」みたいな反応になる。それはもう仕方ない。

最後に、ルンバ教の聖典をでっちあげて終わりにします。

 いにしえにルンバあり
 そのかたちまるく 地上のほこりをすい
 大地きよめ 星の命となった

 いにしえの先祖たち
 ルンバとともにおどり
 ルンバとともにまわる

 いくとせが過ぎようと
 われらルンバとともにあり
 人々のいのちきよめ 星とともにおどる

 ルンバ右にまわり ひとつ命うまれ
 ルンバ左にまわり ひとつ命きえる
 万象根源にルンバあり
 かたときも忘るることなかれ

すらすらと暗唱して完全に勘違いさせたかったです。

 

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