真顔日記

上田啓太のブログ

アレ栄一郎のアレピース

以前もすこし書いたが、私は六十巻あたりでワンピースを読むのをやめた。中学生のとき、連載開始と同時に読みはじめ、数年前にリタイアだ。

しかし今日気づいたのは、なんだかんだで自分は今もワンピースのストーリーを把握しているということだった。ネットで定期的にネタバレを読んでいるからだろう。

「ほんと未練たらしいね」と同居人は言った。

たしかに、別れた女の情報をフェイスブックで追っている男のようで、我ながら気色が悪い。全然ワンピースとの関係を清算できておらん。ルフィが今どんな島にいるのか、どんな敵と戦っているのか、それだけは知っておきたいということか。ルフィは元気でいるのか、今でもゴムのように身体を伸ばしているのか、もう私と交わることはないけれど、ルフィがどこかの海の上、同じ空を見ているならそれでいい……。

「もう読めよ!」と同居人は言う。

しかし読まない。私の心は複雑なのである。

ということで、最近の自分は、ネットでネタバレを読み、疑問に感じた点は同居人に説明を求めるという、あぜんとするほど歪んだワンピースとの付き合いかたをしている。

一方の同居人は、今でも読んでいるはずなのに、記憶が非常に雑である。この女の説明を信じて大丈夫なのかと頻繁に思う。一番ひどかったのは「悪魔の実」という言葉がスッと出てこなかったことで、

「ほら、あの、アレ……アレの実が……」

と言っていた。

悪魔の実なんてのは、第一話から出ているワンピース世界の最重要アイテムだろう。それが「アレの実」になる。どれだけ大ざっぱな記憶をしているのか。

このざまじゃ、そのうち作品名すら出てこなくなるんじゃないか。アレピースである。アレ栄一郎のアレピース。アレの実を食べた麦わらのアレが活躍する週刊少年アレで連載中の国民的なアレ。

アレピースの世界では、何もかもがアヤフヤである。

擬音は「どん!」ではない。「ふぇソわァ……」である。もちろん主人公の名言もグダグダのグズグズ、「ほら俺、アレの王になるのよ、アレ、アレ、海のアレよ、船に乗って仲間とやるアレ」と「海賊」の二文字が出てこない。

「アレだって、集団で船に乗って、財宝とか冒険とか、アレ、あるじゃん、アレの王になりたいのよ、いま出てこないんだけど喉まで来てんのよ、アレ、アレの王よ、誰か出ない? 誰も出てない? じゃあもういいわ、アレの王ね、はい、アレね、アレの王に俺はなる(ふぇソわァ……)」