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真顔日記

上田啓太がいろいろ書くブログ

「ネコ=カワイイ」の方程式が揺らぐ瞬間

ネコのはなし

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影千代がセツシの尻をなめていた。

人間の場合、相手の尻をなめるのは屈辱的なこととされるが、ネコの場合はちがうようである。影千代は誰に命令されることもなく、すばらしい自由意志にもとづいて、セツシの尻をなめているようだ。

なめられている側のセツシも気持ちのよさそうな顔をしており、なめる側となめられる側、お互いの需要と供給は一致しているわけだから、第三者の自分が何か言っても仕方ないのかもしれない。

なので、私は暖かい気持ちで観察していたんだが、やがて影千代は尻をなめた舌で、そのままスムーズにセツシの顔もなめはじめた。こうなると、さすがにセツシはマジギレするんじゃないかと思ったが(私だったらマジギレする)、引き続き気持ちよさそうな顔をしていた。尻をなめた舌でそのまま顔面をなめられても何の問題もないようだ。

このような場面を見せつけられると、人類の一員としては、ひく。ネコカワイイの一言ですまされない獣性を見せつけられ、人類が長い歴史の果てに、友人の尻をなめないことを学習してきたのだと実感させられる。

ネコというのはあくまで獣であり、人類が社会で生きるための雑多なルールも学んでおらんから、このような生き物と同居していると、日々、文明が揺らぐ。あまりに見た目がかわいく、毛がモコモコしているから、ネコが野蛮な生き物だということを忘れてしまうが、こいつらはあくまで獣なのである。

ネコが大きなあくびをしたとき、臓器のようなてらてらした口内が丸出しになり、「ウワッ、獣!」と驚くこともある。同時に濃厚な魚のにおいが漂ってくることも多い。魚系のキャットフードを食べているからだろう。

このへん、私のなかで、「ネコ=カワイイ」というシンプルな方程式に裂け目ができる瞬間である。尖った歯や、唾液で濡れた桃色の肉や、口に残った魚肉の臭いは、さすがにかわいくはない。

ネコ狂いの同居人ですら、抱っこしている最中にネコが口をあければ、反射的に「くさい!」と言っている。シンプルな感想である。これ以上削りようのないシンプルな感想。もっとも、くさいと言われてもネコはキョトンとしており、その目はまんまるだったりするんで、結果的に「あっ、でもかわいい……」に落ち着くわけではあるが。