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真顔日記

上田啓太のブログ

へたくそなリコーダーのおもむき

家の近くで、小学生がリコーダーを吹いていた。もののけ姫の主題歌である。私は居間で寝そべっていたんだが、音だけが耳に入ってきた。しばらく聞いていた。

なお、小学生と書いたが、窓から確認したわけではない。リコーダーを吹くのは小学生だろう、という勝手な決めつけである。主婦や老人は昼間からリコーダーを吹かないだろう。なので小学生だったという前提で進める。

小学生の吹くもののけ姫は明らかにへたくそだったが、それが逆に面白くて良かった。へたくそな演奏には独特のおもむきがある。これはピアノ演奏なんかもそうで、住宅街を歩いている時に誰かの弾いているぎこちないショパンが聴こえてくると、たまらない。プロの演奏はさまざまな方法で聴くことができるが、素人のへたくそな演奏はこのような状況でもなけりゃ聴くことができん。貴重なのである。

小学生はまだ冒頭部分しか吹けないらしく、「張りつめた弓の」というメロディだけを何度も何度も練習していた。張りつめた弓の……張りつめた弓の……張りつめた弓の……張りつめた弓の……と執拗に繰り返している。反復練習が大事なのは分かるが、聞いているこっちからすりゃあ、いくらなんでも弓を張りつめすぎである。そろそろ矢を放て。

居間で寝そべったまま、ひたすら繰り返されるフレーズに耳を傾けていると、こういうところから発狂していくのかもな、と思った。ぽたぽた落ちる水滴の音を聞いているうちに発狂、みたいな感じで、小学生の吹くへたくそなリコーダーきっかけで発狂である。これはまぬけ。