真顔日記

上田啓太のブログ

それならスタバでドヤ顔してもいいよ

スタバではたくさんの人々が様々なことをしている。コーヒーの飲める作業場みたいになっている。純粋にコーヒーを飲みに来ている人間よりも何かをするために来店している人間のほうが多いようだ。コーヒーを飲み終えてからが本番という雰囲気が漂っている。

昔、「スタバでMacBookAir開いてドヤ顔」なんて言葉が流行ったこともあったが、最近の店内を見ているとMacBookAirは普通のものになっている。かなりの人がパソコンを開いているし、そのうち二、三人は確実にMacBookAirを使っている。これだけ普及した状況じゃ、ドヤ顔も糞もないだろう。

このあいだ見た小太りの男など、MacBookAirを使いながら放心状態に陥っており、画面に視線を向けたまま口を半開きにさせていた。それは尻の穴にネギでも突っこまれたかのような表情で、どう考えてもドヤ顔の真逆であった。

じゃあ今、スタバで何をしてりゃドヤ顔できるのかという話だが、これがなかなか難しい。何をしようが普通になっている。ドヤ顔という以上、希少性がポイントだと思うんだが、いまの状況じゃ容易にドヤ顔などできんだろう。

読書はもちろん普通である。文庫はもちろん、ハードカバーを読んでいる人もいるし、洋書を読んでいる人間まで、けっこう見かける。なので自慢はできない。勉強も普通だろう。高校生も大学生も勉強しているし、資格取得のために勉強している人もいる。小学生にしか見えん子供まで勉強している。その年でスタバかよ、とは思いますが。

こうなってくると、今の時代にスタバでドヤ顔するなど不可能じゃないかと、みなさん絶望されるかもしれんが、今日、ひとつの可能性を見つけた。テーブルに白紙を積み上げて、ひたすら数式を書きつづけている男がいたのである。これは格好よかった。

年齢は二十代後半か三十代といったところ、青白い顔にヨレヨレの白シャツ、頭にはすでに白髪がまじり、身体はガリガリ、エネルギーはすべて脳の計算に使われています、といった外見。そんな男が前かがみで数式を書いており、たまにふっと顔をあげ、頭をボリボリ掻いている。

スタバでこんなに本格的に数学に取り組んでいる人間は初めて見た。それは映画に出てきそうな天才数学者のイメージそのもので、眉間に皺を寄せたり、腕を組んだり、ぶつぶつ何かを言ったりしている。さすがにその内容は聞こえんが、私の勝手な妄想で補完しておけば、

「ったく、フェルマーの野郎、厄介な問題を残していきやがって……」

そんなことを言っているはず。

いや、勝手な妄想なんだが。

さて、フェルマーの最終定理というのは、有名な難問だったわけだが、けっこう前に解決したらしい。いま有名なのは「ミレニアム懸賞問題」というやつだろうか。これは一つの問題ではなく、それぞれに無関係な七つの難問らしいんだが、「七つの難問」という響きだけでも、グッとくるものがあるだろう。

ウィキペディアによると、この七つらしい。

・P≠NP予想
・ホッジ予想
・ポアンカレ予想(解決済み)
・リーマン予想
・ヤン-ミルズ方程式と質量ギャップ問題
・ナビエ-ストークス方程式の解の存在と滑らかさ
・バーチ・スウィンナートン=ダイアー予想

(出典:ミレニアム懸賞問題 - Wikipedia)

まあ、リストアップされたところでわけわからんと思いますが、私もわからんので安心してほしい。とにかく私が言いたいのは、あのスタバの男には、この七つの難問に取り組んでいてほしいということ。「ヤン-ミルズ方程式と質量ギャップ問題」あたりがいい。わけのわからなさ加減も。

やはり、「スタバでMacBookAir開いてドヤ顔」と比べたときの、「スタバでヤン-ミルズ方程式と質量ギャップ問題解いてドヤ顔」の希少性はすごいし、それならドヤ顔してもいいよ、と素直に思えるわけである。

なので、これからはみなさんも、「スタバでMacBookAir開いてドヤ顔」なんて志の低いことはやめて、「スタバでヤン-ミルズ方程式と質量ギャップ問題解いてドヤ顔」を目指してください。私はとても目指せませんが。ヤン-ミルズ方程式が何なのかも知らんので。