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真顔日記

上田啓太がいろいろ書くブログ

ネコを怒れない人々

ネコのはなし

お気に入りのカーディガンに穴をあけられて気づいたが、ネコに悪さをされても、まったく怒りがわいてこない。ムッとすらしない。ただただ「しかたないなあ」と思う。目尻にはしわまで寄る。服を破られているのに、目尻にしわ!

これは私だけではない。三十一歳女性など、以前、初音に顔を引っかかれて血が出たことがあったんだが、そのときの言葉が「も~! は~ちゃん!」だった。血が出てるのに、「も~!」である。にょろにょろで表記される感じで済むのである。鮮血の赤とにょろにょろほど似合わないものもない。

おまけにネコからは謝罪の言葉のひとつもない。飼い主の服に穴を開けようが、血が出るほどの傷をつけようが、キョトンとしている。血を見てキョトンである。「なんか赤いの出た」としか思っていない。「血だよ!」と教えても言葉がわからない。無敵である。

三十一歳女性によると、他の飼い主も似たようなものらしい。プレミアつきの限定版CDを粉々に噛み砕かれた人や、数十万円のソファで爪とぎされた人など、世間にはさまざまな飼い主がいるらしいが、その誰もが怒ることなく、苦笑いしながら、みずからの体験を語るらしい。「まったく、やれやれですわ……」と自嘲気味に語るその顔は、怒りではなく喜びに支配されているらしい。

私もまた、こうしてやれやれ感を表明しているわけだが、正直なところ、これを書いているあいだも何度かネコに邪魔されている。キーボード周辺を無意味にうろつくという定番の邪魔の仕方である。さらにキーを踏まれ、意味不明な文字列を入力される始末。思わずこんな言葉が出る。

「こら~! やめろ~!」

やはり、にょろにょろで表記されてしまうのである。