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真顔日記

上田啓太のブログ

『君に届け』のその後

いまさら説明の必要もない気がするが、『君に届け』という少女漫画がある。このあいだ三十一歳女性がネットで読んでいた。20巻突破記念で、最初の数巻が無料で読めるようになっていたらしい。

私は20巻突破という事実に驚いた。というのは、何年か前に12巻まで読んだのだが、その時点で爽子と風早君は両思いになっていたからである。照れながら手をつないでいたからである。要するに、君に届いてたのである。

だからあのとき、「あと1、2巻で終わるんだろうな」と思っていた。それからはなんとなくタイミングを逃したままになり、続きを読んでいなかったんだが、連載はまったく終わってなどいなかったのだ。

あの後、どう展開しているのかを想像してみるが、悲しいことに私は漫画といえば少年ジャンプという男である。少女漫画というものをほとんど読んでおらず、その文法も理解していない。そんな私に想像できる展開は、

・風早君よりも爽やかな男が現れる
・風早君が厳しい修業によって爽やかさの壁を超える
・さらに爽やかな男が現れる
・風早君がさらに厳しい修業(百倍の重力で爽やかさを維持する訓練など)をする
・風早君が爽やかすぎてスカウターが爆発する
・さらに爽やかな男が現れる
・作者が爽やかさのインフレを批判される

こんなものであるはずがないのは、さすがに分かる。

では、付き合うことになった爽子と風早君が手をつなぐ以上のことをするのか。このほうがまだ少女漫画らしい。しかし記憶ではあの二人ほどピュアな生き物はいなかった。とにかく照れて照れて、話が進まないことが多々あった。あの二人が付き合い始めても、具体的な性行為まで描くとは思えない。キスですら怪しい。あの二人はキスという行為を知らない気がする。手をつないだら子供ができると思ってそうだ。12巻で初めて手をつなぐ時なんか、それだけで15ページも使っていた。

ここで一つの仮説が生まれる。手をつなぐために15ページ使った漫画ならば、初めてキスをする時は単行本5冊は必要なんじゃないか。緊張、葛藤、互いの心理描写、事前の想像、友人のはげましと後押し、期待と恐怖、妙にキラキラしたスクリーントーン、そういったことをひたすらやらないと、あの二人はキスという行為に辿りつかない気がする。そしてキスより先の行為となれば、いよいよコミックスで百冊はかかる。

ということで、私の頭のなかの『君に届け』は、13巻以降、キスするか否かでひたすら葛藤している。13巻でキスの予感が生まれ、20巻でもまだ迷っている。真相は分からない。