真顔日記

上田啓太のブログ

腹を出して転がるだけの仕事

腹を出してゴロゴロ転がる。そのような単純な動きで人間を誘惑するのがネコという存在である。おそらくネコは人類をナメている。深夜のネコ会議は人間を下に見る発言であふれているのだ。あいつら腹出して転がっときゃメシ出すよ、なんて囁きあっているにちがいない。

昨日の晩もネコは腹を出してゴロゴロしていた。三十一歳女性はそのたびに「お、出ましたね!」と一人で盛り上がっている。ネコに敬語である。そこにヒト科としての尊厳はない。

ネコが畳の上で腹を丸出しにする。三十一歳は「今が人生の絶頂です」なんて顔でワシャワシャとさわる。毎晩のようにそんな行為が繰り返される。たまに三十一歳はやりすぎて触ってはいけない部位を触り、手を噛まれている。それでも文句ひとつ言わない。

ネコは腹を出すことの価値を知り尽くしている。だからだろうか、最近は出し渋ることも多くなってきた。いつも、ネコは腹を出す前にすこし頭を下げる。だから三十一歳はネコが頭を下げた時点で「お、出ますか!? ついに出ますか!?」と興奮する。拳を握りしめて、期待に満ちた前歯をのぞかせる。

だが最近は、この流れから、転がらずにスタスタと歩いていくパターンが増えてきた。腹を出すと思わせておいて、すまし顔で去っていくネコ。「出ませんかぁ」とため息をつきながらも、妙に満足げな顔の三十一歳。完全にネコの支配下に置かれている。深夜のネコ会議で「あの前歯チョロいよ」と言われていてもおかしくはない。