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真顔日記

上田啓太のブログ

小学生の筋肉にジェラシー

マクドナルドでムキムキの腕をした小学生を見た。

正直なところ嫉妬した。小学六年生くらいだろうか。まだ顔はあどけない。童貞丸出しのあどけない顔立ちをしている。しかし腕だけが、ノースリーブからのぞく二本の剛腕だけが、大人も顔負けの圧倒的な存在感をはなっていた。腕相撲したら負ける。即座にそう思った。

巨大なバッグを肩からかけていた。クラブ活動の帰りだろうか。サッカー部あるいは野球部? 練習を終えて帰りにマクドナルドということか。ちょっと筋肉があるからって、小学生がひとりでマクドナルドに来ていいものだろうか? 大人びた態度をとりやがって。

小学生は注文をすませてバーガーの到着を待っていた。私はずっと小学生をにらんでいた。野生動物が天敵に出会ったときのように、ギリギリと歯ぎしりしながら眉間にしわをよせていた。小学生の腕はたくましく、二頭筋と三頭筋という二匹のドラゴンが、いまにも飛びかかってきそうだった。

最近の私はどうかしている。とうとう小学生にまでライバル心を感じるようになってきた。なんなんだ、筋肉ならなんでもありか。見境なしに筋肉をみて、嫉妬して、歯ぎしりして、地団駄をふんで、心のなかで「俺だって……!」とつぶやいている。筋トレをはじめて以来、自分の未熟さばかり目について、あらゆる男たちが筋肉を見せつけてくるように感じる。

小学生はたくましい二本の腕でトレイを持ち、こちらに歩いてきた。トレイくらい俺だって持てる。さっき、俺はトレイにビックマックとポテトとドリンクをのせて堂々とここまで歩いてきた。俺の腕も負けていない。トレイを持ったくらいで得意になるのは大間違いだからな!

小学生はとなりの席に座った。私はずっと緊張していた。見ないふりをした。目があったらやられると思った。すこし右腕に力をいれてみた。俺の上腕二頭筋を見ろ、なかなかのもんだろう? そんなテレパシーを送ったが、小学生には届いていないようだった。右腕に力をいれて服の下で力こぶを何度もピクピクさせてみた。筋肉を激しく動かし、右に座る幼い獣に、大人のたくましさを誇示してやった。それは筋肉の躍動によるモールス信号だった。

 ピク、ピク、ピク、ピク、ピク、ピク、ピク……

 オ、レ、ノ、ホ、ウ、ガ、ツ、ヨ、イ……

小学生に伝わったかは分からないが、それだけやると満足して席を立ち、帰宅した。小学生のほうは振り返らなかった。

最近の私はどうかしている。