真顔日記

上田啓太のブログ

休日を勘違いした女

「水曜休みじゃなかった……」

帰宅と同時に三十一歳女性が言った。表情が暗かった。ものすごく落ち込んでいるようだ。わたしは平日も休日もない生活だから知らなかったのだが、今週の木曜は祝日である。女はそれを水曜だと思い込んでいたらしい。

「なんで勘違いしたんだろ。水曜だと思ってたんだけどな」

心配になるへこみっぷりだった。たしかに、休みだと思っていたら仕事があるというパターンの精神的ダメージはすごい。

「今日、夜更かしするつもりだったんだよ。ネコの動画たくさん見るつもりだったんだよ。読みたいマンガもたまってるし、朝からずっとやること想像してたんだよ。会社でも明日は休みだってウキウキしてたし、最高ですなあって思ってたんだよ」

ボソボソと続けた。雑草が生えていたら確実にむしっていただろう。

「夕方に会社の人から残りは明日でいいよって言われて、あれって思ったんだよね。おかしいなって思ったんだよ。調べたら休み木曜だったし、水曜は普通に会社だったし、計画がすべてオジャンになったし、もう、なんだよ!って……」

二年ほど住んでいるが、ここまで沈んでいる姿は見たことがなかった。元気づけようと思い、「木曜は休みだしいいじゃん」と言ってみたが、まったく、無職が適当なことを言うものではない。この言葉が逆鱗にふれた。

「木曜なんて意味ないよ! 水曜がよかったんだよ! 水曜って週の真ん中でしょ、水曜が休みになると五日間が真ん中でスパッと切れるんだよ。月火と木金の二日ずつになるんだよ、すごくラクになるんだよ! 水曜が休みになると社会人は大喜びするんだよ!」

「水曜休日最高論」を早口でまくしたてられる。

女は勢いにのって、木曜をバッシングしはじめた。

「だいたい、木曜なんて休みになっても意味ないんだよね。月火水で三日も働いてるし、いまさら休日になられても困るんだよ。金曜に一日だけ出社しなきゃいけないのもテンション下がるし最悪なんだよ、木曜が休みになっても良いことなんてないよ。木曜なんて休みにするべきじゃないよ。そういう法律を作っちゃえばいいんだよ。みんなそう思ってるよ!」

圧倒的早口で言い切ると、「みず!」と言って冷蔵庫に歩いていった。

演説は終わった。

政府関係者のみなさん、見てましたら検討してください。