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真顔日記

上田啓太のブログ

低級オリジナルソングを歌う女

居間から三十一歳女性の歌う声がきこえてくる。ずいぶんと上機嫌だ。しかし私は耳をすまして激しく後悔する。その歌が三十一歳女性によるオリジナルソングだったからである。聴いているほうが赤面してしまうような低品質の楽曲であった。ここに歌詞を引用しよう。

  シュワシュワ〜 シュワシュワ〜 シュワシュワシュワシュワ〜
  シュワシュワ~ シュワシュワ~ シュワシュワシュワシュワ~
  シュワシュワ~ シュワシュワ~ シュワシュワの 歌〜

これほどまでに知力を使わない歌はめずらしい。これを聴いてからだと、だんご三兄弟だってモーツァルトに聴こえる。

三十一歳女性はこの曲ができた経緯を語った。「なにか炭酸が飲みたい」と思った瞬間に、天から降りてくるように、この歌詞が口をついて出てきたそうだ。熟練の作曲家が語る「曲が降りてきた」体験と同質のものだと言いたいようだった。このシュワシュワソングは神に授けられし楽曲である。ならば神はバカだ。

三十一歳女性は聞いてもないのに、曲を作るうえでのテクニックを披露してくれた。

「最後に『〜の歌』ってつけると、うまくまとまるよ」

つまり、「シュワシュワ」という単語をひたすら繰り返すだけでは、いっこうに曲は終わらず、永遠に続いてしまう。それでは喉も疲れるし、飽きもくる。よって適当なところで楽曲を終わらせねばならないが、「シュワシュワ」のループを脱け出すのは容易なことではない。

しかし最後に「シュワシュワ〜の歌〜」とつけると、アラ不思議、楽曲は突然、すんなりと、誰の文句も出ない形で、フィナーレを迎えることができる。これは三十一歳女性が日常的にオリジナルソングを量産するなかで辿りついた極意であり、本来なら一子相伝にでもすべきものだが、特別にブログで全世界に公開してよいそうだ。

ゴミみたいな情報を読者のみなさんにインプットしたところで今日の日記は終わるが、最後に私からもテクニックをひとつ。このように同居人が愚にもつかぬオリジナルソングを上機嫌で歌いはじめた場合、それを簡単にやめさせる方法がある。その方法はいたって簡単、耳元でこんな言葉をささやくだけでよい。

「もうすぐ三十二だよ」