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真顔日記

上田啓太がいろいろ書くブログ

ワンピース弁当を買った

居候生活

コンビニで「ワンピース海賊弁当」なるものを見つけた。とうとうワンピースはコンビニ弁当になった。中二の頃に連載がはじまって以来、なんだかんだで毎週読んで、そのまま十五年。あの頃、私が夢中になっていたマンガはとうとうこんなことになったのだ。

ルフィは、海賊王になるより先に弁当になった。

本人は納得しているのだろうか。

三十一歳女性が耳元で「買うの? 買うの? 買っちゃうの?」とささやいた。子供の頃の自分なら迷わず手に取っていただろう。しかし上田も今では二十六歳、よろこんでワンピース弁当に手を伸ばす年齢ではない。ワンピースは好きだが、それを理由に弁当まで買うような情熱はランドセルの中に置いてきた。

「買わねえし」と言って、プイッと弁当コーナーを後にした。

パンコーナーで適当なパンを取り、お菓子コーナーで適当なお菓子を取る。だが頭からワンピース弁当が離れない。ワンピース弁当の鮮烈なビジュアルが網膜に焼き付いて、口のなかがヨダレでいっぱいになる。結局、弁当コーナーに戻り、「冗談だから」と前置きして、ワンピース弁当を手に持った。何が冗談なのかサッパリ分からなかった。三十一歳は「買っちゃうんだ、買っちゃうんだ!」と興奮ぎみであった。

私の手には、クリームパン、コアラのマーチ、ワンピース海賊弁当があった。小学生に選ばせたような甘い甘いラインナップだった。三十一歳が爆笑しながら「小二っ! 小二っ!」と連呼した。「小二だね、いますぐ小二になれるね!」といやに喜んでいた。店内で爆笑するのはやめなさい、とたしなめて店を出た。

帰り道でも、三十一歳女性による小二コールはおさまらない。さすがに調子に乗りすぎである。私はどう見ても小二ではない。この身体、この顔つき、小学生からは程遠い。ランドセルを担いでもタチの悪いコスプレにしかならないだろう。

さらに言えば、今の私が半ズボンを履けば、笑えないキンタマがはみだす。冗談じゃ済まされないほどリアルな、デフォルメ皆無のキンタマが飛び出すのだ。二十六歳男性のキンタマにもはや可愛げはない。それでもおまえは俺を小二と言えるのか。

三十一歳は真顔で答える。

「キンタマとか言うのも、小二っぽい」

グウの音も出なかったという。