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真顔日記

上田啓太のブログ

このファイヤーマンと飲みに行きたい

回覧板に、火災防止を呼びかける紙が入っていた。炎の挿絵が描いてある。

この挿絵、「火災は怖いぞ」と恐怖心を煽るのが目的なんだろうが、

こいつ、すごくイイやつっぽい。

「恐怖心を煽る」という点でいえば、完全に失敗している。ぜんぜん怖くないし、悪いやつじゃないのが一目で分かる。笑顔がステキだし、こいつ、たぶん友達100人くらいいる。こんな人懐っこそうな顔、人間でも滅多にいない。

こいつを見ても、「やっぱ火事は怖いし気をつけよう」なんて思わない。

「こいつと酒飲んだら楽しいだろうなー」と思う。

だから今日は、この炎とのサシ飲みを妄想していたんだ。

「いやあ遅くなっちゃって」

「ひさしぶりだなあ」

「いきなり雨降るもんだから参った参った。死んじゃうっての」

「前もゲリラ豪雨で死にかけてたもんね」

「マジで風前の灯よ、あ、タバコ吸うなら火使っていいよ」

「わるいね」

「でも最近どうよ。不景気不景気でどこもかしこも大変だろ、あ、その肉もうちょっと焼いたほうがいいぞ」

「おまえで焼いていい?」

「おう」

「どうなの、ミズキちゃんとは」

「だめだめ、あの女、冬終わったら連絡つかねーの」

「カラダ目当てだったんだね」

「俺のこと便利な焚き火だと思ってんだよ、あの女」

「手編みのマフラーもらってなかったっけ」

「あれは巻いた瞬間に黒焦げになった。それもイメージ悪かったみたいだけどな。あ、タン塩うめぇ」

「前はよくデートしてたのになあ」

「いやあの女おかしいんだって。ディズニーランド行ったら、真っ先にスプラッシュマウンテン連れていかれたからね。ありえねぇと思って、どんな神経してんだって」

「普通、察するよね。見た目でね」

「前も素敵な場所があるとかいって、行ってみたら滝だったからね。どう見ても滝だから、もう、死ねって言われてんのかと思って」

「なんでわかんないんだろうね」

「しかもあの女感動して、いつかナイアガラ行きたいとか言い出して!」

「タブー出たね」

「タブー出たよマジで! 俺ナイアガラって言葉きくだけで三日は眠れなくなるんだよ!」

「別れて正解だよ」

「あっ、やべっ」

「どうしたの」

「ちょっと机の下いるから、隠れるからな、話しかけんなよ!」

「うずくまっちゃって」

「隣の座敷、お冷や、10個も来てる」

「ああ」

「お冷や、怖ぇから……」

「まだ治ってなかったんだ、お冷や恐怖症」

「やべぇから、お冷やだけはやべぇから……」

「しばらくそうしてなよ」

「マジでお冷やは反則だよ……震えが止まんねぇよ…ナイアガラより怖ぇ…」

「そういえば、この店の名前、養老乃瀧だよ」

「あ、無理、心折れた」