真顔日記

上田啓太のブログ

みんな東と西って一瞬で判断できるの?

東と西がわからない。

どっちがどっちかわからない。左右と東西が頭のなかでうまく対応しない。

もちろんたっぷり時間があれば分かる。静かな部屋を与えられて、窓からは湖が見えて、机にハーブティーとくるみのクッキーが置いてあって、やさしそうな初老の紳士に「明日の昼までに答えを出してくださればけっこうです」と言われたなら、東と西くらい余裕でわかる。

しかし、「今すぐ東に進め!」というふうに、軍隊みたいな雰囲気の中、コンマ何秒レベルで東と西の判断を要求されるとパニックになる。頭が真っ白になって、脳が機能を停止して、どっちが東でどっちが西かわからなくなって、最終的に北へ行く。北へ北へまっすぐ進む。

なぜこんなことになっているのか。

さかのぼること十五年前、小学校四年のとき、担任から「東の反対は左」と教わった。このフレーズで東と西を覚えた。家でなんどもなんども暗唱した。東の反対は左、東の反対は左……。だから今でもこのフレーズで東西を判断するのだが、大人になって気づいたのは、このフレーズの分かりにくさ、そして無駄な複雑さ。たとえば「東に行け」と言われた場合、頭のなかでどんな処理をするかというと、

  東に行け
 →東の反対は左
 →左の反対は右
 →よって東は右
 →右に行けばいいのか

このようなステップを踏むわけで、非常にまどろっこしく、咄嗟の判断からは程遠く、戦場でこんなことをしていれば確実に鬼軍曹のビンタが飛ぶ。往復ビンタが乱れ飛ぶ。そしてパニックになって北へ北へ進む。

これは「反対」なんて言葉が入ってるのが悪いわけで、「東は右」とか「西は左」というふうに覚えていれば、1ステップで東西と左右をむすびつけられた。「東の反対は左」というフレーズは語呂だけはバツグンに良く、だからこそ子どもの私が簡単に覚えられたのだろうが、おかげで、東と西を判断するたびに数秒間フリーズするできの悪いコンピュータのような上田が誕生した。

東の反対は左。この呪われたフレーズは、きっと死ぬまで私の頭に居座り続けるし、これを吹き込んだ当時の担任に文句のひとつも言いたくなるが、今どこにいるのかも分からないし、東も西もわからないし、とりあえず北へ北へ進む。