真顔日記

上田啓太のブログ

ストリートビューで自分たちを探す

グーグル・ストリートビューで、われわれの家が見れるようになっていた。三十一歳女性と興奮ぎみで見た。とんでもない高解像度で写っていた。なんだか赤面しちゃうくらい、はっきりと、くっきりと、われわれの家が表示されていた。

おそろしきグーグルの情報収集能力である。グーグルマップはすさまじい勢いで進化している。この調子だと、「ヒモ」と入力するだけで我が家にピンが立つ日も近い。

さて、ストリートビューを見ていて気づいたが、通行人が普通に写りこんでいる。顔は一応ぼかしてあるが、気休め程度のギリギリモザイクであり、知りあいが見れば一発でわかりそうだ。そりゃ文句を言う人もでてくる。

ただ、我々はプライバシーよりも刹那的な盛り上がりをとる人間なので、写っていてほしいと願いながら、自分たちの姿を探した。よく通る道をかたっぱしから見ていく。期待にみちた目で、こぶしを握りしめ、ワクワクしながら自分たちを探した。しかし、私も三十一歳女性も、まったく写っていなかった。

私はスウェット姿でウォーキングする自分の姿をストリートビューで見たかった。背筋をピンと伸ばして、ムダに元気に腕を振って、しかも顔面にはモザイクという、笑うしかない写真を期待した。世界に恥をさらしたかった。

もしくは、三十一歳女性が写っているんだが、前歯にだけモザイクがかかっているような、前歯のプライバシーだけが守られているような、そんなグーグルのアドリブを期待した。人権より前歯権を尊重してほしかった。

通行人として自分が写るなんて滅多にないことだろうし、実際に写っていたらそれはそれで面倒もあるのだが、これでトーンダウンした感は否めない。我々はストリートビューを見るのをやめ、それぞれの作業に戻った。

数十分後、夕飯を買うため二人でコンビニに行った。道中の三十一歳女性は口数が少なかった。さすがにショック受けすぎだろうと思った。こんなにも心の弱い女だったか。というか、ストリートビューにそこまで写りたいか。

心配になって「元気だしなよ」と言うと、三十一歳は言った。

「もしネコ写ってたら、ネコの顔にもモザイクいれるのかな」

この女、べつに落ち込んでなかった。ネコのプライバシーのこと考えてた。

「ネコでもいれてくれるよ、グーグルだし」と何の根拠もないことを言って、喜ぶ三十一歳とともに夜道を歩いた。