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真顔日記

上田啓太がいろいろ書くブログ

インティライミの悲劇

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テレビにナオト・インティライミという人が出ていた。最近出てきたミュージシャンらしい。知名度がどの程度なのか分からないが、我々ふたりはまったく知らなかった。

もっとも、昨今のオリコン事情には疎く、EXILEという言葉をきいても、グラサンと坊主しか連想できない時代遅れの我々である。あまり参考にはならないだろう。それに、なんとなく気づいていることだが、グラサンと坊主は同じ人だ。

そんな我々だから、曲でもルックスでもなく、ナオト・インティライミという名前に反応した。ナオトはわかる。しかしインティライミとはなんだ。聞いたことがないし、どこの国の言葉かも分からない。

三十一歳女性は「食べものじゃないよね?」と真顔で言っていた。

食べものではないと思う、と真顔で答えておいた。

意味こそわからないが、なんだか響きがおもしろい。インティライミ。つい言ってみたくなる言葉である。ということで、我が家に空前のインティライミ・ブームがやってきた。我々は目新しいカタカナを使うことで興奮するタイプの人類なのである。

最初は脈絡もなくインティライミと連呼していたが、そのうち、「カタカナをすべてインティライミにする」というルールが生じて、これが異常な盛り上がりをみせた。たとえばコンビニに行くときは「ちょっとインティライミ行ってくる」であり、シャワーを浴びるときは「ちょっとインティライミ浴びてくる」と言うわけである。

こうして文字にしてしまうと何が面白いのかサッパリ分からないし、正直なところ書きながら耳の先まで真っ赤になるのを感じるが、その時は異常に盛り上がった。ホコリをかぶったPSPの横で、インティライミ・ゲームに花を咲かせていたのだ。ソニー社員に殴られても文句は言えない姿である。

だが、こういう遊びをしていると、そのうち温度差ができはじめる。最初は二人とも楽しんでいるのだが、深夜一時をすぎても相変わらず地球最後の日みたいなテンションで騒ぐ私に対して、三十一歳女性は徐々にトーンダウンしはじめるのだ。

そして、本日何十回目かのインティライミに対して、とうとう「いいかげんにして」という発言が飛び出した。女性は畳みかけるように「しつこい、うるさい」とシンプルな罵倒を飛ばし、「あたしは明日仕事なのよ!」とクリティカルな発言を繰り出した。

「俺は明日もあさっても仕事じゃない……」と気づいて、呆然とした。

祭のあとのような静寂がその場を包んだ。

その後、泣きながら熱いインティライミを浴びた。