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真顔日記

上田啓太がいろいろ書くブログ

ゆるふわガールより前歯女のほうがいい

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これまで三十一歳女性のことを前歯だなんだと書いてきて、げっ歯類と同じカゴにほうりこんできたけれど、ちょっと考えを改めた。もしかしたら、この女はスゴイ存在なのかもしれない。尊敬に値する前歯なのかもしれない。

態度が急変したきっかけはこうだ。

今日、私は靴下を買ってきた。三足千円のやつだ。みなさんもご存知のとおり新しい靴下はめんどくさい。ちいさい金具やプラスチックのピンがついている。とくにプラスチックのほうは厄介で、いちいちハサミを持ってこなきゃいけない。

しかしハサミを探していた時に事件が起きた。三十一歳が靴下をとりあげて、前歯でプラスチックをブチッと噛みちぎったのである。それは一瞬のできごとだった。目をまるくしている私を気にもせず、三十一歳は淡々とプラスチックを噛みちぎっていった。そして三足すべての分を噛みちぎると、ふぅ、と一息ついて言った。

「便利でしょ」

この瞬間、三十一歳は「げっ歯類」から「超人類」になった。

私はとてつもない女の家で暮らしていたのだ。こんなにも頼もしい女、ハリウッド映画にしかいないと思ってた。アンジェリーナ・ジョリーからセクシーさを引いて前歯を足せば、三十一歳ができあがる。アンジーがどうした。こっちにはゲッシーがいる。

この女は無人島に漂着しても前歯ひとつで生きていけるだろう。前歯で木をけずり、前歯で植物を刈り、前歯で野生動物を狩る。前歯で石をカッカとこすり、火をおこして肉を焼く。前歯の出たロビンソンクルーソーがここにいる。最後は前歯で作ったイカダに乗って、ぶじに日本へ帰るのだ。

ちまたでは「愛されメイク」だの「ゆるふわガール」だの言われてるのに、ゆるふわの対極でたくましく生きるこの女の姿はどうだ。ゆるふわ愛されガールにプラスチックが噛みちぎれますか。無理でしょう、ゆるふわなんだから。ゆるふわガールなんて、ふ菓子すら噛みちぎれそうにない。

わたしはあふれんばかりの感動を三十一歳に伝えた。ツバをとばしながら伝えた。世界中がアンジーを選ぼうと自分はゲッシーを選ぶこと、前歯はアーミーナイフより役にたつこと、ゆるふわガールを見かけたら喉元に前歯をあててやればいいことを。

三十一歳は、「ぜんぜん嬉しくないし、意味もよくわからない」と答えたが、「まあでも、ゆるふわガールは嫌いだね」と言って、前歯をキラリと光らせた。

全国のゆるふわガール、いますぐ逃げろ。