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真顔日記

上田啓太がいろいろ書くブログ

胃ぶくろウルサイよ!

居候生活

私も三十一歳女性も、異常に腹が鳴っている。

同居するようになって気付いた。この家が静かだからかもしれない。ものすごい頻度で鳴っている。しずかな京都の家のなかで腹の音だけが鳴り響いている。特にメシどきになると大変で、デリカシーという言葉を全力で踏みにじるかのように、胃袋が好き放題に鳴り響く。むこうの腹がグウグウ鳴れば、こちらの腹もグウグウ鳴って、胃袋と胃袋のコール&レスポンスが起きている。

あまりにも鳴るものだから、このあいだ近くにあったメモ用紙に”正”の字を書いていったのだが、たった数時間で私は8回、三十一歳は17回鳴っていた。私も鳴りすぎだが、三十一歳はそれにダブルスコアをつけている。圧倒的な腹の虫である。なんとおそろしい女であることよ。

なお、メモは三十一歳がビリビリに破って捨てた。

興味深いことに、言葉に反応して腹が鳴ることがある。「カツ丼」といった瞬間に三十一歳の腹がグルルゥゥと鳴ったことがあった。言い訳のしようがないタイミングであった。これほど恥ずかしいことはない。あまりにも単純な胃袋である。単純な人間の単純な胃袋だ。三十一歳は「いやちがう、偶然だから」と弁解していたが、その後も、「どこでカツ丼を食べるか」という話をしているあいだじゅう、グウグウ鳴っていた。この音だけで世界中から食料が送られてきそうだった。

ちなみに、「庭にカナブンがいる」と話した時も三十一歳の腹は鳴っていた。「カナブン」というキーワードでグルルゥゥゥーと鳴っていた。これに関してはわけが分からない。この女はカナブンを食のカテゴリに入れているのか。食のストライクゾーンが広すぎる。なんだ、鳥か。鳥なのか。カナブンをついばみたいのか。スナック感覚でついばみたいのか。

「いやこれはほんと偶然だから」と必死で否定していたが、一応、カナブンは遠くへ逃がしておいた。腹をすかした天敵が、すぐそばで前歯を出しているから。