真顔日記

上田啓太のブログ

ガシャポンにハマる

近所の本屋の前にガシャポンが置いてある。いろいろと種類があって、ほとんどは子供向けアニメのものだが、ひとつだけ「世界の生きもの」というシリーズがある。これが三十一歳女性の琴線にふれたようで、前を通るたびに「これやろうよ」と言うようになった。最初のうちは「そんなのいらないだろ」と言っていたのだが、あまりにも三十一歳女性がしつこいものだから、一度だけやってみた。

それが半年前のできごとだ。

今では、家がフィギュアだらけになっている。まったく、ガシャポンをなめていた。一度始めたらやめられない。怖ろしいシステムである。「まあ百円だしやるか」を繰り返して、いつのまにか五千円くらい使っている。金をどんどん吸われている。しかし後悔はしていない。こんなにカワイイ動物たちと巡りあえたんだから。

そんなことを言っちゃうくらいガシャポンに夢中なわけである。すごく楽しい。シークレットのツチノコが出たときなんか、路上で「やったー!」と叫んでしまった。素でガッツポーズしている自分がそこにいた。三十一歳女性はさすがに引いているかと思ったら、前歯まるだしで喜んでいた。いっしょに暮らしてると似るものである。

しかし問題もある。カブリの問題だ。これだけ何度もやっていると、かなりの確率で前にも出た動物が出てくるのである。これは楽しくない。絶望的な気分になる。さっき入れた百円玉が恋しくなる。八月の後半、カブトムシが三回連続で出たことがあった。あれは悲劇だった。

カブトムシは昆虫の王様である。一匹目は当然テンションがあがった。ちょっとしたカーニバルだった。帰り道はカブトムシの話題で持ちきりだったし、居間のいちばん目立つところに飾ったものだ。だが、次の日もカブトムシが出たときは二人とも真顔になっていたし、三日目にいたっては家に着くまでひと言も口をきかなかった。居間に飾ってあったカブトムシは数日後にそっと外されていた。

別の問題もある。たまにカプセルが異常に固く締まっているのである。ほとんど嫌がらせのような固さだ。どれだけ力をいれても開かない。ふんばっても開かない。ギチギチに締まっている。両方に引っ張ってもダメ。境目に爪を突っ込んでもダメだ。

しかたなく、深呼吸して、全神経をカプセルに注ぎこみ、映画で観たブルースリーの姿をイメージしながら、「ホワァッ!」と力んだりするのだが、事態はなにひとつ変わらない。むしろ、「ホワァ! ホワァ!」とやるうちに手が汗ばんできて、余計に開く気配がしなくなる。カプセル相手にホワホワ言っている私を見て、三十一歳女性は「こいつダメじゃん……」という顔になっていく。

結局、地面に叩きつけて、足で思い切り踏んづけたら開いた。

まったく、国家機密が入ってるんじゃないんだから、あくまでも100円のガシャポンなんだから、もう少しゆるくしてほしい。そんな時にかぎって、出るのは三匹目のカブトムシだし。