読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

真顔日記

上田啓太がいろいろ書くブログ

この町に怖ろしい子供がいる

日々と思考

近所の子供たちは、よく地面にチョークで落書きをしている。家の前のコンクリートが落書きだらけになっていて衝撃を受けることなど日常茶飯事である。うちの前は車がめったに通らないので、子供たちも思うぞんぶん落書きできるのだろう。

落書きはたいていムチャクチャすぎて意味不明だし、どうせ数日も経てば自然と消える。だからあまり気にしていなかったのだが、今日の夜、さすがに素通りできない落書きを見つけた。

生肉である。

他に言葉らしきものは書いていない。ムチャクチャな落書きのなかに、これだけがハッキリ分かる形で書いてある。これを書いた子供が怖い。なぜ地面に生肉と書く。どんな意図で、何を思って、生肉と書くのだ。他にいくらでも言葉はあるだろう。「元気」とか「勇気」を差し置いて、「生肉」と書いた子供は誰だ。心の中にどんなものが渦巻いているんだ。

地面に生肉と書き残した子供が、このあたりに住んでいる。そう考えると、平穏な日常が破られたような気になる。生肉の子に怯える日々が始まる。夜、コンビニなんかに行く途中、暗闇のなかで、生肉をペッタンペッタンと壁に投げている子供に出くわしたら、もう無理だ。二十七歳を目前にして、なさけなく失禁する自分が目に浮かぶ。「おにいちゃん、生肉好き?」なんて聞かれたら、もうコンビニに行くのは諦める。「炒め物のほうが好きです」と言って一目散に逃げる。

一ヶ月ほど前にも、ムチャクチャな落書きのなかに意味の分かる文字が入っていたことがあった。その時は、


兄 兄

と書いてあった。三つの「兄」が三角形になっていた。当時はなんだこりゃと笑っていたが、あれも生肉の子供と同一人物だと考えると、なんだか薄気味悪くなってくる。「兄」と「生肉」。スティーブン・キングなら、このキーワードで500ページくらい書ける。

これからも落書きを見つけたら報告するつもりだが、その前に私は生肉の子供に殺されるかもしれない。全身に生肉を貼りつけられた私が、遺体で見つかるかもしれない。その時は、裸の身体に生肉が貼りつけられた私を見て、「故人はレディーガガに憧れていました」とだけコメントしてほしい。