読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

真顔日記

上田啓太がいろいろ書くブログ

年賀状を作った

三十一歳女性のもとに何枚か年賀状が届いていたので見せてもらった。驚いたことに、そのほとんどに写真がついている。「結婚しました」「子供が生まれました」「もう三歳になりました」などのメッセージとともに、自分たちの写真を載せているのだ。しかも、デザイン関係の仕事をしている知りあいが多いからか、写真の使い方やロゴの入れかたもうまく、無駄にクオリティが高い。

いちばんすごい人は、どこか外国らしき大草原で、家族全員で手をつないでジャンプしていた。そのまわりに他の写真がたくさんコラージュされており、海外旅行のパンフレットみたいになっていた。「幸せに暮らしてマース!」というメッセージが、ビンビンに発せられていた。

三十一歳は眉間にしわを寄せて、煙草を吸いながらその写真をみていた。

鼻から大量の煙をだしておった。

三十一歳女性は結婚しておらず、もちろん子供もいない。物置として使っていた小さな部屋に、二十六歳の男を住まわせているだけである。だから「結婚しました」や「子供が生まれました」は使えない。しかしなかなか「男を住まわせました」というのも厳しい。そんなことを書けば、世間様が牙をむく。

「まあ、適当に返事だすよ」と三十一歳は言うが、その顔に一抹の寂しさを感じた。私としては、ぜひとも三十一歳の知りあいのみなさんに自分の存在を知ってほしい。たしかに我々の関係は、世間に大々的に発表できるものではないかもしれない。だが、うまく演出すれば、「まあ、こんな幸せの形もあるよね」と思える年賀状が作れるのではないか。

ということで、私のディレクションのもと、三十一歳女性に年賀状を作ってもらった。

  • 抜けるような青空の下
  • ひとめで外国だと分かる場所で
  • あたらしい家族である私を
  • 飾り気のない姿で
  • みんなに紹介する

以上の条件で、作りあげた年賀状がこちら。

「これ、送っちゃおうよ!」というと、三十一歳は無言で首をふった。

鼻からは、見たことがない量の煙が出ておった。