真顔日記

上田啓太のブログ

イブの夜にふるわせて

クリスマスイブなのに、シャックリが止まらなくなったから大変だ。

浮かれて肉を食ったのがいけなかったのか、店を出た途端、ヒャッヒャッとバカみたいな声が出る。イルミネーションに彩られ恋人たちが腕を組んで歩く街角を、場違いなシャックリ男が前歯をだした三十一歳女性と歩く。聖なる夜にタールをまいて歩くようなものだ。

三十一歳女性はクリスマスにまつわるあらゆる物事、すなわち電飾やツリーやサンタの格好をした店員や街に流れるクリスマスソングをまるごとバッサリ「ナンセンス」と斬り捨てたが、唯一、肉とケーキに関しては「ぜひ食べるべき」とすばらしい笑顔で言った。私はヨダレを垂らしながら全面的に同意した。

そして我々はフォルクスというステーキチェーンに足を運び、サンタもUターンしそうな獣の形相でステーキをガツガツ食った。だが、ひさびさの獲物にテンションが上がりすぎた私は肉といっしょにたくさんの空気も食べていたようで、店を出てすぐ、激しいシャックリに襲われるはめになったのだ。

ヒャッ、ヒャッ、ヒャックと聖なる夜にシャックリを連発していると、街全体が敵になったような気がする。三十一歳女性でさえ「コイツマジかよ」という顔になっている。「よりによって今日かよ」という顔、「どんだけ間が悪いんだよ」という顔である。

「これはシャックリじゃない。クリスマスを祝福して、天使が横隔膜というハープを弾いてるんだよ」

そんなロマンチックな解釈でフォローしようとしたが、喋っているあいだも絶え間なくシャックリは続いているわけであり、「天使がヒャッ横隔膜ヒャッ、ハープヒャッッ」とわけが分からない。女性は無視して来たるべきケーキのことを考えていた。

ケーキ屋では狭い店内にたくさんの人々がひしめきあっていた。女たちが獣のような目で品定めしている。三十一歳女性は群れの中に突入していったが、私は店のすみでひたすらヒャッヒャッ鳴いていた。もはや営業妨害である。女子高生らしき二人組が苺のタルトとチョコレートケーキのどちらにするかでキャッキャ言っていたが、そのうしろでは成人男性が死にそうな顔でヒャッヒャ言っていたわけで、私がこの子たちの親だったら間違いなく通報している。

ということで、横隔膜をふるわせているうちにイブの夜が更けていくという事態に思わず心もふるえました。みなさん、メリー・クリスマス。