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真顔日記

上田啓太のブログ

家にカマキリがいた

目覚めると畳にカマキリがいた。同居人がカマキリになったのかと思ったが、彼女はとっくに会社に行っていた。正真正銘、本物のカマキリである。夜のうちに入ってきたんだろう。これだから田舎はやめられない。

つまみ出すのも面白くないので、瓶にいれてみた。子供の頃の気持ちにもどって、平日の昼間からカマキリの観察である。カマキリは瓶の中で激しく動いていた。慣れない環境でパニックになったんだろう。グルグル歩きまわったり、壁を鎌でこすってみたり、チョコマカ動いている。なかなかカワイイやつである。

だが数分後、カマキリはピタッと動きをとめた。心配になるくらいに動かなくなった。電池式なのかと思った。近くで見ると、触覚だけがユラユラ揺れていた。その横顔はシリアスに見えた。「一体全体、わたしはどうしてしまったのだ?」という顔だ。瓶という異常な環境にほうりこまれたことで、生きる意味について考え出したのかもしれない。

沈思黙考するカマキリを見ていたら、申し訳なくなってきた。なんだ、俺は気まぐれで瓶にほうりこんで、なんの罪もないカマキリを哲学に目覚めさせている。もはやカマキリに草むらを駆けめぐっていた頃の無邪気さはない。瓶のなかでじっとしながら、「鎌で他の虫を殺すことは許されるのだろうか?」とか、きっとそんなことを考えている。

カマキリを瓶から出して、庭に放った。短い間でしたが、ありがとうございました。早く元気になって、昔みたいに小バエとか捕まえてくださいね。そんな念をおくって別れたが、カマキリはそのまま石の上で静止していた。いちど芽生えた世界への疑念は、なかなか拭いされないのかもしれない。

「最後になにか思い出になるものがほしい」と、彼氏にフラれた女子のような考えが浮かんだ。カマキリとの思い出づくりのために庭にいる姿を写真にとった。

カマキリ1

カマキリ2

カマキリの後ろ姿はとてもカッコよかった。最初は縁側から撮っていたが、それでは迫力がいまいち伝わらない気がして、庭におりて接写した。寝起きの姿のまま、Tシャツにパンツで庭にひざまづき、ひたすらシャッターを切った。平日の昼間から必死でカマキリを撮る二十六歳。そっちはそっちで、写真におさめたくなる姿だった。